ほじくれども

 にんじんが発芽してきて双葉の真ん中から本葉がのぞけてきました。

 にんじんくらい、ただの発芽でこんなにぼくをホッとさせる品目は他にありません。  

 まずもって種代が高くて、一度にまく量もそれなりにまとまっているし、発芽までの日数もやけに長く2週間くらいかかる上に、その間、土がいつでも湿っていないと発芽にいたらぬぜいたく者で、ひたすら暑くて雨が降らずで人でさえ生きているのがやっとなこんな灼熱の夏に、こいつらをうまく芽吹かせるためには、他の品目にはありえないほどの一工夫も二工夫も必要で、色々手をかけたあげく結局芽が出ないとなると、種代の数万円がなかったことになるだけならまだしも、それももちろんすこぶる嫌ですが、いままでの労力がすべて水の泡になってしまい、ということはつまりじたばたしないで大人しく家で昼寝でもしていたほうがむしろ賢い判断だったと思い知らされるのがたまらなく悔しくて、もし蒔き直すにしても、もしかしたらとぐずぐず希望を捨てられず、2週間は一応発芽を待つことになり、すると失った時間はもう返らず、播種の適宜をいたずらに食ってしまうだけになり、なにからなにまで上手くいかなくなってしまいます。 

 ぼくは先週だか先々週だかのニュースレターで、にんじんについては種をまいたら最後、もう気にもとめずにお構いなしで日々を暮らすのが一番です、と書きましたが、もちろんそれは理想的な心構えということで、実際のところ、にんじんの種を蒔いたら結局、あいつのことはもう忘れよう忘れようと思うほどかえって毎日思い出し、いちいち用もないのにちょっと離れたにんじん畑にいっては、蒔いたところをほじっくって、その様子を確認せずにはいられません。もはや、ほじくればほじくるほどに土が乾いて、本来出るはずのものも出なくなってしまうことになりかねませんが、それがわかっていてもほじくりかえさずにはいられません。ほじくってこの目で確かにまいた種の先っぽから白い数ミリの根っこがちょんっと出てきたのを確認できて初めてぼくは他の仕事に取り掛かることができるのです。いや、この一粒だけがそうだからといって他の種がみんな動き出しているとは限らない、とすぐに思い直し、次から次へとほじくって、こういうところからしてにんじんというやつは本当に労力がかかり、だからこそ芽が出てきたときの安堵感といったらありません。

ないとう農園

あんしん、あんぜん、美味しいの一歩先へ。 「心躍る野菜」を育てています。 presented by 有機農業法人 ㈱さいたま五つ星野菜

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